

焼きつく姿は午後3時 太陽はすこし西
松の葉の山 混ざる小石 揺れる水面
風鈴がセミと鳴く 祖父との会話 13 分
「iichiko PERSON AWARD」 は三和酒類株式会社と東京藝術大学デザイン科が行う受託研究プロジェクトです。若年層の生活・嗜好実態を考察し、「iichiko」の未来へ向けた価値を考えることをコンセプトに始まりました。
日本の生活文化において酒は、祝い事や社交の場だけでなく、日常の時間や感情のリズムと密接に結びついてきました。現代における “生活と酒の関係性”を各々の視点で切り取り、「お酒との新しい付き合い方。」を表現します。本アワードでは「いいちこパーソン」をモチーフにした作品を[写真][動画][アートピース]の3部門で募集しました。

どの作品からも、テーマに向き合う中で磨かれた皆さんの感性と、制作によって得られた気づきが伝わってきた。確かな撮影技術も生かされ、いずれも見応えのある作品で、楽しく拝見できた。いいちこパーソンは、今も美しい瓶のフォルムで親しまれている商品である。皆さんの作品を通じて、商品デザインが日常に溶け込むことで生まれる芸術性を改めて実感することができた。

季刊iichikoNo.171に、河北氏の「売れるかどうかじゃない。面白がってつくると評判になる。いい意味での遊び。」(P23)や長濱氏の「数字競争に先がなくなった世の中で魅力ある製品をつくるには、インスツルメンタルからコンサマトリー(遊戯的思考)への発想の転換が不可欠」(P79)という言葉がある。今回の審査にあたり、遊び心という視点を入れて直感的に採点した。右脳を刺激する創作物に囲まれて、ワクワクする時を過ごすことができた。

家族皆でテレビを囲んだ時代、大勢の真ん中に酒があった。少し前の大学も皆で酒を組み交わす喧々諤々の日々。笑いと時にはケンカも辞さなかった。しかし今はどうだろうか。そんな酒の習慣は、会社も大学もほぼなくなり、晩酌する家庭すら少ない。酒は“公”の道具から、“私”の道具へ姿を変えた。いいちこパーソンという酒は時代の先頭である。そんな仮説から改めてその存在を見直し、“私”を楽しむ各人の暮らしと酒のカタチをこれから楽しみに見ていきたいと思う。

今、お酒は車よりも楽しい存在だろうか? 現代の多様な娯楽と競い合えるだろうか? お酒は本来、私たちの暮らしに豊かさや喜びをもたらしてきた存在のはずである。誰もが創造性を発揮できる現代だからこそ、生産者も消費者も、単なる受け手ではなく「当事者になる」ことに価値がある。自らの感性で「つくる」。人や文化を「つなぐ」。暮らしの時間を「つむぐ」。飲むだけでは終わらない、「新しいお酒との付き合い方。」が始まる。
爽やかさの中に、深い味わいをひめて。
いままでにない洒落たボトルがいままでにない時間をつれてきます。
ひとりの時間を深くする酒です。
